野球好きでなくとも日本代表が世界の大舞台で戦い、まして3連覇がかかっているとなれば、侍ジャパンの試合に熱い視線が注がれて当然。
しかし、残念ながら準決勝敗退で、一気にWBC熱も冷めていく気配です。
先日行きつけのお店で、
「先生、5分前まで侍ジャパンの牧田が店にいたんですよ。」
「おー、あのアンダースローの牧田かー、会いたかったなー。」
というか、準決勝であのサブマリン(潜水艦)投法のライズ・ボールを投げさせてみたかったですね。
アンダースロー独特のボールが下から上に上がってくる球筋は、メジャーリーガーたちもあまり見慣れないから、さぞかし打ちづらいだろうと期待していたのですが。

サブマリンと言えば、アメリカのサブマリン特許(Submarine Patent)が想起されます。
特許出願された発明で、その発明技術が普及した時点で特許権が成立し、その存在が公になるというアメリカ特有のものでした。
グローバル・スタンダードに足並みを揃えることなく、アメリカだけがこの特許制度を維持したため、これまで数々の問題も起きてきました。
補正手続き・継続出願を繰り返して発明日を維持しながら、発明の内容を長く非公開にしておいて、特許権の取得を先送りし続けるのです。
そして、その技術が普及するのを待ってから特許権を取得・公開し、利用者に多額の特許料を請求するという酷い例が多くありました。

米特許法の改正法案は、一度はブッシュ大統領によって蹴られました。
しかし、一昨年オバマ大統領が署名し、この4月からの改正法の施行が決まっています。
そもそもこれまでの「先発明主義」というのは、前述もしましたが特許申請を終えていなくても、先に発明したことが証明されれば認めるという制度で、アメリカだけの特殊なものでした。
世界中の国々が採用している「先願主義」では、特許当局に申請書を提出した日をもって権利が発生するという極々当たり前のものです。
いよいよ来月から、グローバル・スタンダードである「先願主義」が採用されますから、これは大きな前進であると思います。

グローバル・スタンダードが違っていては、交渉事や貿易問題でもなかなか落としどころが決まりません。
いよいよ交渉入りするというTPP問題も然りです。
先日、私のセミナーを受講していただいたA社の社長からもメールをいただきました。
『TPPによって日本の農業は、野菜生産者、畜産、酪農などは大規模化を進める?小規模生産者の高付加価値戦略は?』
概ねこんな内容でした。
国の舵取り一つで弱者ほど負の影響を受け、強者は常に有利な立場を取るのは、どんな業界でも基本的には共通ですから、TPP交渉の行方が心配なのは当然でしょう。
A社社長とはまたメールのやり取りで意見交換していきたいと思っていますが、ここで少し私が思う「前提条件」を書いておきたいと思います。

そもそもTPPとは(Trans-Pacific Partnership)=環太平洋パートナーシップ協定=環太平洋経済連携協定ですが、環太平洋諸国による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA)のことです。
国会やマスコミで、細かな除外産品や国民皆保険への影響などの話ばかりがクローズアップされています。
当然大事なことではありますが、その前に日本が加わった時の加盟国のGDP(国内総生産)比較をしてみて、前提条件を確認すべきでしょう。

想定する加盟国の合算GDPの91%を日本とアメリカの2か国が占めるという事実の存在です。
そのため、実質は日米間のFTA(自由貿易協定)+αだという見方もあります。
事実上の日米自由貿易協定に等しいとすれば、除外産品や保険のことよりも大きな「前提条件」が問題にされるべきであると思います。
そうでなければ、TPP協定は「現代の黒船」になるかも知れないのです。
あの時どれだけ不平等な条約であったかは、皆様ご存知の通りです。

先行して締結された米韓FTAを参考にすると、「ラチェット規定」や「ISDS条項」というアメリカが有利になる条項が存在します。

「ラチェット規定」のラチェットとは、一方向にしか動かない爪歯車のことで、すなわち、「現状の自由化よりも後退を許さないという規定」です。
締約後に事情によって、市場の規制強化が必要になっても、後戻りは許さないというもので、他国ではすでにこの問題が露呈しています。
これは金融・保険・法務・特許・会計・電力・ガス・輸送・通信・建設・流通・教育・医療などの様々な分野に規定されています。
アメリカの投資ファンドや米国企業に有利な条件ですから、今後巨額の解決金や補償金の訴えが出てくることでしょう。
しかも、当事国が他国とのFTAを締結した場合には、「その条件が米国よりも有利な場合には米国にも同条件を適用する」という規定まで入っています。

そして「ISDS条項」とは、「投資家対国家間の紛争解決条項」(Investor State Dispute Settlement)であり、協定を結んだ国同士の企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項です。
アメリカの名だたる企業が「TPP推進のための米国企業連合」をつくり、ホワイトハウスに様々な要求を突きつけています。
この企業連合は、「アメリカの製品やサービスを拒むことができるような手段を作ってはならない」という圧力を掛け続けています。
金融・通信・建設・航空・飲料・物流・IT・医薬品・医療業界団体・保険業界団体・小売業・メディア・農業団体など、あらゆる業界のあらゆる大手企業がつくる企業連合ですから、米政府も大変なプレッシャーを受けています。
 
「アメリカの対外投資保護」「市場開放規定」「紛争解決条項」を組み込むべきと、北米自由貿易協定 (NAFTA) 同様のISDS条項を盛り込もうと躍起になっているのです。
相手国の何らかの措置によって損害が生じたとすれば、それを理由として国際投資紛争解決センター (ICSID)という仲裁機関に直接申立てを行い、その補償を求めることができるというもので、極めて厄介なものです。
これらの条項がTPPに入るとすれば、加盟国の政府や地方自治体は訴訟リスクと補償問題を抱えさせられるのです。

日本は交渉参加の前に、除外項目の精査のみならず、その前提である「条約条項の詳細」について、「交渉参加前提条件」を示すべきと私は考えます。

既に各国での訴訟案件も多いことも、よく調べて検討されるべきです。
「想定加盟国の合算GDPの91%を日本とアメリカの2か国が占める」という事実は、日本が不参加のTPPは非常に小さな規模になり、日本の参加が不可欠だと考えられているということを忘れてはならないと思います。
またそれらに基づいて、「タフ・ネゴシエーション」(厳しい交渉)を進めてほしいと思います。
まずそこが固まってから、個別の交渉に入るべきと思います。

そして、その前に農水省・農水族議員はTPPの交渉の如何を問わず、減反政策や参入障壁の緩和・撤廃を進めるべきです。
明日の日本農業のあるべき姿と、最適な保護方法を見極めて、そこに国費を投入する --- 食糧・農産物問題は「国家の安全保障問題」に他ならないのです。
交渉がどちらに転がっても、この「前提条件」をしっかりと踏まえていかなければ、日本の国家グランドデザインのリニューアルは難しいのではないでしょうか。


17日に千葉県知事選が投開票されて、現職の森田健作氏(63)が圧勝で再選を果たしました。
それにしても31・96%という投票率はいただけません。
前回の45・56%でも低いのに、市民の意識が非常に低いとしか言いようがありません。
TPPをはじめ、政治的課題を任せることになる議員や首長を選出する一票を投じることが、自分自身や子供や孫の世代に対して大きな意味を持つことを自覚したいものです。


イタリア総選挙では、ポピュリズムの帝王のようなベルルスコーニ前首相が、またとんでもないバラ撒き政策など色々と無茶なことを言っていましたね。
前述のTPPのことと同様に、「前提条件」をしっかりと踏まえなければ、ポピュリズムの帝王に国をボロボロにされてしまうかも知れません。
「真面目に考えて、小さな力を真面目に行使すること」を馬鹿らしいと思うと、もっといい世の中にしたいという「前提条件」が壊れてしまうのです。
今日は少々堅苦しい話が多かったのですが、次回は「春爛漫の話題」にしたいものです。


2013.3.21.  ビジネススキル研究所  鶴田 慎一  拝

昨日は何としても桜の花を見たくて、色々と場所を検討した末に「千鳥ヶ淵」に決定。お堀に浮かべた小舟からの桜、とても風情と季節感に満ちていました。
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