先週は、以前経営学の授業を担当していた学校で、特別講義を行いました。

スケジュールが厳しくて、経営学の授業は休講と集中講義ばかりが続いていたため、止む無く数年前にお断りさせて頂きました。

学生たち相手の授業はとても楽しくて好きですが、残念ながら現在は特別講義だけに伺っています。

これから社会に出て行こうとする若者たちに、「価値観とは」「夢を持つとは」「仕事とは」「企業とは」「儲けとは」「大人とは」「社会の仕組みとは」、、、と様々なキーワードで講義するのですが、あまり通常の授業では聞かないことも多く、一所懸命に前傾姿勢で聞いてくれていました。



社会に出る前に、「心掛け」や「あるべき姿」を学んでおくことには、大変大きな意味と意義を感じます。

もう20年来のお付き合いをしている企業では、毎年の内定者が確定してから「入社前鶴田一日学校」を実施して、4月の新入社員研修時にフォロー・アップを行っています。

「入社前鶴田一日学校」をやっていなかった頃に比べると、入社数ヶ月前に方向づけをしていますから、「入社式の日から既にシャッキリ感が違います。」と喜んで頂いています。

4月の新入社員研修時に「入社までに頑張ったこと」を発表してもらうと、「待ってました!」とばかりに、「○○の資格を取りました。」とか「○○の勉強を続けました。」、「ビジネス書を○冊読みました。」「毎朝新聞に目を通して、朝晩のTVニュースを欠かさずに見るようになりました。」などの前向きな発表が続きます。

社会に出る前のタイミングに刺激を受けたからこその「変化」「変身」、彼らに「チャンスを与える意味」は実に大きいのです。



またある会社では、内定者確定後に「本社」と「本社工場」の見学会を実施していますが、今年からは「せっかく集まるのだから、数時間の講義をやってほしい。」と言われています。

これから「働く現場」を見て、仕事に対する感覚を「漠然」から「実感」に変えて、「働く」って「ハタをラクにすることだ」というコー・オペレーションの価値観に目覚めて頂く。

そのことで自分自身が「仕事に対して、楽に向き合える」ということに、「気づき」を提供することが重要だと思っています。

『気づく人は傷つきやすいが、気づかない人は人を傷つけやすい』もので、「気づき」を得ることは「より良く生きるための応用力」を得ることにつながります。

「生き甲斐」「やり甲斐」「頑張り甲斐」の『根幹』を見つけられるように、「気づき」という水先案内をしてあげれば、内閉している「頑張りたい自分」が覚醒することはよくあることなのです。



「最近の学生は思考力が落ちている」と耳にすることがありますが、確かに「卒論」の中身がネットからのコピペで埋め尽くされているという話も聞きます。

時代的背景と言えば確かにそうですが、「知識」だけでは未来は切り拓けませんから、「思考力」へのこだわりを持ちたいものです。



私はほぼ毎日、自分のホームページのアクセス解析をしていますが、ここからも色々な気づきがあります。

例えば少し前に、研修のグループ・ワーク中に参加者の一人が、ネットで「鶴田慎一 〇〇のテーマ」と検索しているのを発見しました。

グループ・ワーク・テーマそのものをグーグル検索して、さっさと答えを出そうとしていたのです。

「最も効率的に答えを探したい」という気持ちを否定はしませんが、テーマの狙いは「思考と議論」「他者との意見調整」なのです。

「マニュアルさえあれば、バッチリ」という能力の高い人は、「マニュアルなしでは、全く通用しない」という脳力の低い人になってしまうのかも知れません。



企業経営も「効率重視」の落とし穴に陥ることが多々あります。

確かに効率化は重要テーマではあるのですが、会社の近未来の存続・発展に向けて「経営の効果性を追求する」ことこそが、次の成功を確定させる「事業ドメイン(生存領域)」を確立させることになるのです。

そのためには、「徹底的に思考すること」しかないのです。

私の場合はある意味の職業病ですが、多くの業種・業態・企業とのお付き合いがあるため、仕事のオン・オフに関わらずいつも何かを考えています。

寝ている時に、虚ろな夢の中で思いついたことを、すぐにメモしてからまた眠るという経験も何度もあります。

好きでやってなければ、本物の病気になるところでしょうが、実に「【好き】のパワー」は凄いものです。



経営改善手法の一つに「ベンチマーキング(Benchmarking)」というものがあります。

自社の製品やサービス、ビジネス・プロセスや進め方を、優良企業や強い競合他社のパフォーマンスと比較分析するものです。

生産性・コスト・時間・ロス発生率などのベンチマーク(指標測定)を行い、他社との比較分析をすることで「変革・改革・改善」に向けようとします。

その上で「最も効率的・効果的」な「ベスト・プラクティス(Best Practice)」となる技術論・方法論を導き出して、最適なプロセス・マネジメントを行うものです。

PDCA(Plan Do Check Action)、いわゆるマネジメントサイクルも最適化を続けていけば、ベスト・プラクティスに向かっていくということでは同様です。



経営戦略上でベンチマーキングは意味も価値もある手法ですが、「ベンチマーキングを行うこと」が「ベスト・プラクティス」だと勘違いしている方も時折いらっしゃいますので、ご注意ください。

そもそも、靴職人がお客様の靴を修理する時、お客様の足を「ベンチ」に載せ、そこに「マーク」を付けて、足のサイズ測定をしたことからベンチマーキングという言葉が生まれました。

お分かりの通り、靴職人は「お客様の足のサイズは調べた」けど、まだ肝心の靴は「何も直していない」状態なのです。

見事な技で修理をしてこそ、「ベスト・プラクティス」なのです。



「ベスト・プラクティス」とは、今現在の「瞬間風速的な力量」みたいなものですから、経営とは終わりのない「変革・改革・改善チャレンジ」を続けて、常に「ベスト・プラクティス」「ベスト・パフォーマンス」を追求し続けることなのです。

これは企業や業種・業態に関係なく、会社を倒産させることなく無期限に事業を継続・発展させることを前提とする考え方、いわゆるゴーイング・コンサーンの必須条件です。

相撲取りは「シコ」を踏み続けて強くなりますが、我々企業人は「シコウ」を踏み続けて強くなっていくのです。(滑ったかも、、、。)



2012.8.7.  ビジネススキル研究所  鶴田 慎一  拝