先日の新着お役立ち情報「毛利敬親と吉田松陰 (2011/10/04)」で、『吉田松陰が江戸に出て、佐久間象山に学び、その優秀さ故に「象門の二虎」と呼ばれ、もう一人の「虎」は、「米百俵」で有名な小林虎三郎です。(小林については、またそのうちに書きたいと思います。)』と書きました。

 兵学や砲学・洋学で有名な佐久間象山は信州松代藩士で、江戸神田に象山書院を興し、佐久間象山門下即ち「象門」では多くの弟子たちがその思想に多大な影響を受けました。


 吉田寅次郎(吉田松陰)・小林虎三郎は、師の佐久間象山に「天下・国家の政治を行う者は吉田であるが、わが子を託して教育してもらう者は小林のみである」と言わせるほどの逸材で、「象門の二虎」と言われたのです。


 二虎をはじめ、他に勝海舟・坂本竜馬などの幕末・明治維新の立役者たちの多くが、象門に名を連ねていました。


 ドラマや小説で「勝海舟を斬りに行った坂本竜馬が、勝の見識に触れ、その場で弟子になった」というシーンもありましたが、すでに2人とも象山門下生であったことを考えると、どうも史実とは違うような気がしますね。



 さて、そこで今日は小林虎三郎について書いておきたいと思います。


 小林虎三郎は戊辰戦争で敗れた長岡藩の大参事(幕藩体制での家老に相当、現在の副知事相当)で、小泉純一郎総理が所信表明演説で小林の「米百俵」の話を引用したことでも知られています。


 戊辰戦争で敗れた長岡藩は七万四千石から二万四千石に収入が6割カットされ、財政は窮乏し苦境に立たされていました。


 藩士たちは極貧に喘ぎ、その日の食にもありつけず、飢えと闘う日々を送っていたのですが、その窮状を見かねた長岡藩の支藩三根山藩から百俵の米が贈られることとなりました。


 言わば親戚筋からの見舞い・救援物資として、百俵の米が贈られたのです。


 藩士たちは「これで飢えが凌げ、少し生活が楽になる」とホッとしたのですが、喜びも束の間、藩の大参事小林虎三郎は贈られた米を藩士に分け与えずに、売却して学校設立・設備費用とすることを決定しました。


 藩士たちはこの通達に驚き、小林虎三郎のもとへ押しかけ猛反発・猛抗議しました。



 ちょっとこの辺でドラマ仕立てにすると、


 虎三郎は、
「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となるのじゃ。国が興るのも、町が栄えるのも、ことごとく人にある。赤貧を恐れず、不遇に甘んじ、今に迷わず、その意志を貫く!一時の飢えを癒すより、明日の国の発展のため、人材を輩出する学校を創るのじゃ。」
と藩士たちを諌めます。


 当然、血気にはやる(と言うか、空腹に耐えられない)藩士たちは、
「おのれ戯けた上司め、戯言を申されるか。この場で斬り殺してでも米は頂くぞ。」
と殺気立ちます。


 すかさず小林は、掛け軸に記された「四文字の家訓」を差して、
「うぬらは、よもや我が長岡藩のこの家訓を忘れたのか!」と一喝。


 そこには「常在戦場」(常に戦場にあり)と書かれている。


 小林は間髪入れずに、
「御当家の家訓は、いかなる緊急事態にもたじろぐことなく、常に戦場にいるような危機感・緊張感・使命感を持ち続けろということではなかったのか!」と続けた。


 藩士たちはその場に泣き崩れ、
「うぅぅぅ、、お国の再建のために、、、今一度、、耐えてみまするぅぅぅ、、」
と、耐える決意をする。


と、そんな感じでしょうか。



 即ち強烈な危機感・緊張感・使命感を持って、『崖っ淵の論理』・『プライオリティー(優先順位)の鉄則』を忘れず、『小事に惑わされず、今やるべき最重要の課題に取組め』ということです。


 この百俵の米の売却金で作られたのが「国漢学校」であり、一定の学力に達していれば庶民にも入学が許可されたそうです。


 国漢学校は、現在の長岡市立阪之上小学校、新潟県立長岡高等学校の前身であるそうで、後に山本五十六などの人材も輩出しています。


 将来の利益のために今を耐え抜き、辛抱の末に大きな大義を果たすということの象徴的な物語です。


 幹部の小林虎三郎には、この思想が骨の髄まで染み込んでいたからこそ命がけのリーダーシップがとれたということでしょう。



 会社においても、社是・社訓・経営理念・経営方針に対して、幹部が揺るぎ無い信念をもって邁進していれば、その凄さは強烈な指導力としてクローズアップされていきます。


 重要課題に対するエネルギーの集中・統合のためには、「理念・思想で束ねる」ということが絶対要件であり、幹部・管理職の命がけのリーダーシップが、全社一丸体制を創るための必須条件です。


 組織がピンチや正念場、時代の転換期にある時には、特に幹部・管理職の「理念・思想レベル」「揺るぎ無い信念」が問われるのです。


 幹部・管理職であろうがなかろうが、その組織のキーパーソンでありたいのなら、今一度経営理念・経営方針の強烈な刷り込みをして頂きたいと思います。




2011.10.19  ビジネススキル研究所  鶴田 慎一  拝


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