先週政府から、あまり根拠が示されないまま垂直離着陸輸送機オスプレイの安全宣言が出されました。
大阪出張中の新幹線車中でニュース・テロップが流れ、タブレットで下書きを始めました。
東京に帰ってからは、またすぐに3日間の幹部研修に入るため、リリースは数日遅れです。
オスプレイは開発中の度重なる大事故で、Widow Maker(未亡人製造機)という不名誉なアダ名でも呼ばれています。
これまで30人以上の軍人が犠牲になっていて、機械やシステムの問題ではなく「操縦士の腕の問題」と言われたら、合点のいかないパイロットも多かろうと思います。
本家本元のアメリカでも、事故機種は飛行制限区域が設定されるのが当たり前なのだから、沖縄はじめ配備や訓練空域にあたる地域で猛反対されるのも自明の理というものです。
それにしても、原発事故の時といい今回といい、またも政府が国民に充分な情報を公開していないですね。
企業の不祥事などもそうですが、この「情報化の時代」に隠ぺいするということは、「ダメージを大きくすること」に直結するものです。
マーケティングの鉄則=正直の法則、つまり嘘偽りのないことでしか本当の成功はないということです。
権力の座にある者の驕りか、国民感情をコントロールできるという大きな勘違いか、お粗末な政治というほかありません。
テレビ番組に出演した政治家が、一生懸命にオスプレイの「航続距離や搭載量が優れている」ということを訴えているのをよく見ますが、「そうか、それなら賛成!」という人などいないのです。
国民のニーズは「安全の確保」なのですから、そのロジックではニーズに応えられていないのです。
ビジネスのみならず、利害関係を乗り越えて、最低でも「満足」できれば「大満足」というゴールに飛び込むためには、まずは「ニーズ認識の一致」からなのです。
この「ニーズ認識の一致」がなされない議論は、答えが出ないまま並行線を辿るか、一方の不満を押し切って「無理筋の成立」に向かうかしかないのです。
「竹島問題」にしても、互いの歴史認識がずっと平行線なのですから、「歴史認識が全く違うということの再確認」と「これまで両国間で行われてきた交渉や条約の再確認」が、「ニーズ認識の一致」の前提として必要なことでしょう。
ネゴシエーション(交渉)は、一方的な勝利ではWIN‐WIN(BOTH WIN)が成立しませんから、双方の容認可能な範囲の決着を求めなければなりません。
オスプレイ問題では、国民と政府とアメリカ軍の3者関係ですから、厳密にはWIN‐WIN‐WINのトリプルWINの成立が必要なのです。
オスプレイの事故と同様に、議論も「離着陸でトラブっている」という感です。
3者ともに100%の満足が成立しない以上、出来得る限りの情報公開をした上で、「問題・課題」に真摯に向き合うことが肝要です。
実はオスプレイは海兵隊型のMV22と、空軍型のCV22とがあり、事故を起こしているのは圧倒的に空軍型です。
日本に配備予定のオスプレイは全て海兵隊型のMV22で、ヘリコプターの事故率とは大差はないものです。
しかし、同じオスプレイなのですから、MVとCV何がどう違うのかが解らないのですから、まだまだこれでは説得力が足りません。
当然、軍事機密にあたる部分はオープンになりませんから、政治家にも知る由がないでしょうが、大事なことは「100%は無理でも、可能な限り国民の安全を守ること」、そのための「嘘偽りのない出来得る限りの情報を開示すること」でしょう。
MVとCVとでは、「ハード」「システム」「運用」で何が違い、なぜCV22の事故率が高いのかが説明されないと、根拠がないままの「安全宣言」となってしまいます。
現役ヘリコプターのCH46の老朽化と、問題児オスプレイの双方のリスクに同時にさらされているのが、今の沖縄の実態でしょう。
由々しきことです。
尖閣諸島問題も予想通りの展開になっています。
7/30の当欄にも『このままでは、尖閣諸島も中国が上陸作戦(漁船に見せかけて)を展開して、実効支配を狙うというのも十分あり得ることなのです。』と書きましたが、俄かに現実味を帯びてきました。
またもや政府と外務省のミスジャッジによって、東京都が提示する額の2倍の額で「意地の売買契約」をして、問題を大きくしてしまっています。
中国政府は各地での暴動の矛先が共産党政権に向くことを恐れ、沈静化に必死ですが、元をたどれば「正しい情報を与えない反日教育の産物」があの狂った暴動なのです。
国が国民に対して「嘘偽り」でコントロールしようとすれば、必ず後に大きな国家統治のリスクになってしまうでしょう。
「反日教育の申し子」たちが真実と向き合えば、多くの民族の統制が機能不全となり、「民族独立運動の再燃」「国家分裂の危機」になるのではないでしょうか。
中国が世界経済のキー・カントリーであることは、紛れもない事実ですが、カントリー・リスクに対するマネジメントも疎かにしてはならないのです。
ある意味で、「情報化社会における国家統治の未熟さ」には注意が必要です。
私とお付き合いのある多くの会社が、中国に進出していますが、今一度「クライシス・マネジメント」の再チェックをして頂きたいと思います。
我々は多くの犠牲を払った3.11から、重要な教訓を得ました。
想定レベルが低すぎであるのに、「予期せぬことであったから想定外」と言うのは詭弁に等しいということです。
我々日本人は、今回の暴動の仕返しで日本にいる中国人に酷いことをするような人はあまりいないと思いますが、まだまだ成熟とも言いがたいところです。
かく言う私も、たまに行く中国系のお店で「尖閣諸島はどこの国のものか?!」と、たまに聞いてみたい密かな衝動を覚えますが、そこは大人ですからわざわざ「民間レベルの喧嘩」になるようなことはしませんが、、、。
この日本人としての心理的要因の影響は大きくて、実際に多くの中国系のお店の売上が、かなり落ち込んでいるようです。
「WIN‐WIN成立」は「ニーズ認識の一致」からですので、まずは顧客ニーズを掴めるだけ掴んで、こちらの要望もしっかりと伝えて、「健全な大人」のビジネスを展開してください。
このスキルをモノにした人を、「タフ・ネゴシエーター」というのです。
幹部研修明け早々ですが、これから千葉県の銚子で3日間の経営指導です。
犬吠埼から太平洋を眺めたら、あの幕末の吉田松陰や坂本竜馬の国を憂う気持ちが甦りそうです。
「疲労困憊などと言っている場合ではないぞ」、自らを鼓舞しています。
2012.9.24. ビジネススキル研究所 鶴田 慎一 拝