先週は経営者フォーラムの講演で、福岡に行ってきました。
通常の景気・国際問題・ユニークな経営手法などを中心とした講演会ではなく、経営者が「いかに崇高な思想・価値観を持って、価値創造経営に臨むか」という極めて本質的かつ重要なテーマのフォーラムでした。
500名近くの経営者の真剣な受講態度がとても印象的で、終講後の経営相談などもとても積極的でした。
東京に戻って、今週は三菱UFJリサーチ&コンサルティングのセミナーでしたが、多くの業種の役員や営業管理職の方々をはじめとして、年初の忙しい時期にも拘らず多くの方にお集まりいただきました。
皆さんの姿勢から「今年は去年に増して厳しいぞ。取りこぼしなく仕事をしなければ。」という強い危機感・問題意識が、ヒシヒシと伝わってきました。
やはり『天は自ら助くる者を助く』の言葉通り、より強く素敵な会社にしていくために、受講の経費は掛かりますが自助努力の一つの形であると言えるでしょう。
共育(教育)は、企業にとっても個人にとっても永遠のテーマです。
ところで、このところの経済報道は、日本の貿易収支が1980年の2兆6129億円に次ぐ、31年ぶり史上2番目の大きさの2兆4927億円の赤字ということで持ちきりです。
昨年は東日本大震災という未曽有の災害や、タイの洪水の影響による輸出減少、原発事故によって原油やLNG(液化天然ガス)の輸入増加が重なり、大きく貿易赤字になりました。
しかし、円高で所得流出が抑制されていることで所得収支は伸びていますから、自国通貨高は経済全体にはプラス効果になっている側面もあり、単純ではないのです。
今後のトレンドを見ていくと、「一時的か」「常態的か」「日本経済の構造変革か」が解ると思いますが、貿易赤字は円安圧力を生むはずですから、現状の円高にブレーキを掛ける役割は果たしていると思います。
日本は毎年10兆円ほどの貿易黒字を続けてきましたから、累積の貿易黒字は270兆円とも言われ、世界最大の海外純資産保有国となっています。
ところが、原油をはじめとした原材料価格の高騰によって、円高差益が打ち消されていることもあり、苦しまれているメーカーさんも多いのです。
私たちは大変難しい時代に生きていることは確かですが、だからと言って知る努力・考える努力を放棄してはなりません。
正しい情報をキャッチする能動的な努力と、一方で日常的なことから何かを感じ取るという感性も磨いておきたいものです。
例えば、先週21日土曜日の日本経済新聞の夕刊をバラしてみると、新聞紙が2枚半でした。
かなり厳しさが増している印象です。
景気の落ち込みがいよいよ酷くなると、土曜日の夕刊は2枚になります。
御存知の通り、広告激減で紙面が減るのですが、しかも中を見ると関連会社のもので穴埋めしているのが感じられます。
高齢無職世帯は公的年金などの社会保障給付が実収入の84%程度を占めていますが、思った以上に消費は旺盛です。
消費が可処分所得を上回っているのですが、不足分は貯蓄の取り崩しなどで賄っているということです。
ですから新聞紙上の通販広告には、レギュラー・メンバーとして「尿漏れパンツ」が登場するということに必然性が生まれます。
また元気なお年寄りをターゲットにした旅の広告も目立ちます。
しかし、豪華客船の旅を申し込むなら、船長の人物像の確認まで必要な気がしてきます。
業種・業態に関係なく経営は「崇高な思想・価値観」をバックボーンに、自分のミッション(使命)に忠実な仕事ぶりが改めて求められます。
2012.1.26. ビジネススキル研究所 鶴田 慎一 拝